賃貸のプロパンガスが高いのはなぜ?2025年の法改正でできるようになったこと

  • 賃貸の入居者はガス会社を変更できない(国も「事実上変更できない」と明記)
  • 高さの一因だった「設備費用のガス料金上乗せ」は、2025年4月2日以降の新規契約で原則禁止に
  • 入居中の値上げは「原則1か月前までに、理由を書いて通知」が国の指針。通知がないまま上がっていたら書面での説明を求められる
  • できることは「内訳の確認 → 平均との比較 → 大家・管理会社への相談」

なぜ賃貸のプロパンガスは高くなりがちなのか

賃貸集合住宅では、LPガス事業者が大家に給湯器・エアコン・Wi-Fi機器などを「無償貸与」し、その費用をガス料金に上乗せして入居者から回収する商慣行がありました。資源エネルギー庁がこの構図を公式に解説しています(資源エネルギー庁「LPガスの商慣行」)。入居者は入居してから料金を知ることが多く、「料金に不満があっても受け入れるしかない状況」になりがちだった、というのが国の認識です。

そして経済産業省は「賃貸集合住宅の場合、入居後は事実上LPガス事業者を変更できない」と明記しています(経済産業省)。ガス会社を選ぶ権利は建物所有者側にあるため、入居者が戸建てのように乗り換えで解決することはできません。

2024〜2025年の法改正で変わったこと

この商慣行を是正するため、液石法の施行規則が改正されました。

  • 2024年7月2日施行: 過大な営業行為の制限(不動産・建設関係者への設備貸与や紹介料などの過大な利益供与の禁止)、賃貸集合住宅の入居希望者へのLPガス料金の事前提示(経済産業省
  • 2025年4月2日施行: 三部料金制の徹底。請求を「基本料金」「従量料金」「設備料金」の3区分で通知することが義務化され、ガス消費と関係のない設備費用の計上が禁止。賃貸住宅では消費設備費用の計上も禁止されました(資源エネルギー庁Q&A

消費者庁は「賃貸住宅では、事前の合意がない場合、原則、費用負担はありません(2025年4月2日以降に締結する液化石油ガス販売契約)」と案内しています(消費者庁)。ただし、それ以前からの既存契約には設備費用の計上禁止は適用されず(内訳の表示は必要)、新制度対応への見直しは努力義務です。

いま入居中の人ができること

1. 検針票・請求書で3区分の内訳を確認する 2025年4月以降、請求は「基本料金」「従量料金」「設備料金」に整理して通知されることになっています。設備料金に心当たりのない項目が計上されていないか確認してください。

2. 平均価格と比べる 石油情報センターの確報(2026年6月調査)では、全国平均は月10m³使用で9,697円です。地域差が大きく、関東9,079円・北海道11,961円といった水準です(詳しくはプロパンガス料金の平均データ)。同じ使用量で平均を大きく上回っているなら、根拠を持って次のステップに進めます。

3. 大家・管理会社に相談する ガス会社を選べるのは建物所有者です。内訳と平均との差を示して「ガス会社の見直しを検討してほしい」と伝えるのが、入居者にできる最も現実的な行動です。国の商慣行是正で大家側も設備費用を転嫁しにくくなっており、以前より交渉の土台は整っています。

4. 不当な対応があれば通報する 切り替え妨害などの不当な営業行為には、資源エネルギー庁が匿名でも使える「LPガス商慣行通報フォーム」を設けています(資源エネルギー庁)。

入居中に「値上げ」の通知が来た・料金が高騰したときの確認ポイント

賃貸のプロパンガスは「もともと高い」だけでなく、入居中に値上げされることもあります。国の資料でも、LPガス料金の値上げについて「事前の説明や通知を受けていない」という苦情が多く発生していたことが課題として挙げられ、事前通知のルールが国の指針に明記された経緯があります(内閣府消費者委員会 公共料金等専門調査会 資料(2018年4月26日))。賃貸でも、検針票・請求書が自分宛てに届いている入居者はガス会社と販売契約を結んでいる消費者なので、以下のルールの対象です。

1. 通知は「原則1か月前まで」「理由つき」で届くのが決まり 資源エネルギー庁の「液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針」(2024年7月2日改正)は、販売価格を変更する場合、原則として変更後の価格の適用が始まる日の1か月前までに、検針票や請求書等に変更後の販売価格と変更する理由を記載して通知することをLPガス事業者に求めています。あわせて、変更前と変更後の価格を比較できるように(両方を併記する、「○○円の値上げ」と書くなど)記載することも求めています。例外は値下げの場合と、あらかじめ輸入価格等の変動に連動して料金を変える契約を結んでいる場合で、このときは適用開始日の前までの通知で足りるとされています(経済産業省 2024年7月2日プレス「改正ガイドライン」)。

2. 通知がないまま上がっていたら、書面での説明を求める 液石法第14条は、ガス会社が契約時に交付する書面の記載事項を変更したときは、変更した部分について書面を交付することを義務づけています。記載事項には「液化石油ガスの価格の算定方法、算定の基礎となる項目」が含まれます(液石法第14条同施行規則第13条第5号、e-Gov法令検索)。説明のないまま請求額が上がっていた場合は、この書面(電子メール等での提供も認められています)を出してもらうのが最初の一手です。

3. 三部料金のどこが上がったかを見る 2025年4月以降の請求は「基本料金」「従量料金」「設備料金」に分かれています。指針が輸入価格連動の例として挙げているのも「使用量に応じて発生する料金」、つまり従量料金の側です。値上げの理由が原料費の高騰なのに基本料金や設備料金が増えているなら、その説明を求める材料になります。

4. 全国平均の動きと比べる 石油情報センターの確報では、2026年6月調査の全国平均(月10m³使用)は9,697円で、4月調査の9,281円から約4%上がっています。全国の水準が上がっている時期の値上げは業界全体の動きの範囲かもしれませんし、自分の値上げ幅が平均の上昇幅を大きく超えているなら、料金の平均データを根拠に大家・管理会社へ相談する材料になります。

5. 納得できないときの相談先 同じ指針は、LPガス事業者が料金に関する苦情・問合せに適切かつ迅速に対応し、受付日や処理状況の記録簿を作ることも求めています。まずはガス会社の窓口に説明を求め、次にガス会社を選ぶ立場にある大家・管理会社へ相談してください。それでも解決しない料金トラブルは、消費者庁の「消費者ホットライン」188に電話すると最寄りの消費生活センター・消費生活相談窓口につながります(消費者庁)。

これから部屋を探す人へ

2024年7月以降、賃貸集合住宅の入居希望者にはLPガス料金等の情報を事前に提示することが求められるようになりました。賃貸借契約の前にLPガス料金の内訳を確認することを消費者庁も呼びかけています。都市ガス物件かLPガス物件か、LPガスなら月々の目安がいくらかを、家賃と同じ土俵で比較材料にしてください。

なお、戸建て(持ち家)に住んでいる場合はガス会社を自分で変更できます。手順と注意点はプロパンガス会社の変更方法にまとめています。