ハクビシン駆除は自分でできる?法律でできること・できないことの線引き
- 捕獲・殺傷は無許可では違法(鳥獣保護管理法。1年以下の懲役または100万円以下の罰金)
- 自分でできる合法ラインは「餌をなくす・追い出す・侵入口をふさぐ・清掃する」まで
- 順番は「正体の確認→自治体に相談→追い出し→中にいないことを確認→封鎖→清掃」。中にいるまま封鎖しない
- 安全面は「近づかない・素手で触らない」が自治体共通の案内。疥癬・マダニ・糞尿由来の感染症のリスクがある
- 忌避剤で追い出すだけでは解決しない、と東京都が公式に明言している
結論:「自分で駆除」の法律上の線引き
ハクビシンは野生鳥獣なので、鳥獣保護管理法により許可なく捕獲・殺傷することはできません。違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象です(環境省)。市販の捕獲かごを買ってきて自分で捕まえる、という行為がすでに違法になり得る、というのがこの問題の出発点です。世田谷区のQ&Aも、自分で買って設置した罠にハクビシンがかかった場合について「鳥獣保護管理法により、許可なく野生鳥獣を捕獲することは禁止されています」とし、区の捕獲事業では引き取れないと明記しています(世田谷区 ハクビシン・アライグマに関するQ&A)。
なお「ハクビシンは特定外来生物だから駆除してよい」という解説を見かけますが、これは誤りです。環境省の特定外来生物一覧に載っているのはアライグマで、ハクビシンは特定外来生物ではなく、生態系被害防止外来種リストの「重点対策外来種」という位置づけです(環境省 特定外来生物等一覧・生物多様性センター資料)。いずれにせよ無許可捕獲ができない点は同じです。
自分で対処する流れ:6ステップの全体像
「何から手をつければいいか」を先に整理します。自治体の案内を順番に並べると、次の流れになります。
| ステップ | やること | 根拠になる自治体の案内 |
|---|---|---|
| ① 正体を確かめる | 足音の時間帯・足跡・糞を確認する。前足・後足とも指が5本ならハクビシン(タヌキは4本) | 世田谷区Q&A |
| ② 自治体の制度を調べる | 「自治体名+ハクビシン」で捕獲事業・箱わな貸出の有無と対象条件を確認する | 中野区・世田谷区 |
| ③ 餌と足場を断つ | 果実・生ごみ・ペットの餌を放置しない。屋根に届く枝を切る | 東京都環境局 |
| ④ 追い出す | 燻煙剤・木酢液・照明など、嫌がる環境をつくる | 世田谷区Q&A・相模原市 |
| ⑤ 中にいないことを確認して封鎖 | 侵入口を特定し、動物が建物内にいないことを確認してから金網でふさぐ | 相模原市・酒田市 |
| ⑥ 清掃・消毒 | 糞尿の跡はダニの発生源。自治体は清掃・消毒をしないため、範囲が広ければ業者へ | 武蔵野市・北区・中野区 |
タヌキは木登りができないため床下まで、ハクビシンやアライグマは木登りが得意で屋根裏まで侵入します(武蔵野市)。足音が天井から聞こえるなら、ハクビシンかアライグマを軸に考えるのが出発点です(正体の絞り込みは屋根裏の足音の正体・足跡の見分け方を参照)。以下、各ステップの中身を説明します。
自分でできること①:餌をなくす
東京都環境局が案内する基本対策は、餌資源と侵入経路を断つことです(東京都環境局「被害を防ぐために」)。
- 庭木の果実や放置された農作物を処理し、残したままにしない
- ペットの餌の食べ残し・お墓の供え物を屋外に放置しない
- 生ごみを家の周りに置かない
- 家屋への侵入経路になる木の枝を切る
自分でできること②:追い出しと侵入口の封鎖
ハクビシンは頭が入る程度の隙間から侵入します(自治体により5cm角〜8cm四方と案内に幅があります。農研機構の実験では一辺8cmの正方形や6×12cmの横長の隙間を通過。農研機構)。侵入口になりやすいのは壁・軒下の穴、床下の通気口、天井・軒下の換気口、戸袋の下などで、北区は見つけたら金網などでふさぐよう案内しています(北区)。目が広がらない金網でふさぐのが対策の本丸です。
侵入口が特定できないときは、酒田市が紹介する方法が使えます。疑わしい穴の下の地面一面に石灰などの白い粉をまいておき、粉に足跡が残ればそこが侵入口です。ふさぐ方法そのものは工務店等へ相談するよう案内されています(酒田市)。
ただし順番が重要で、中に動物がいる状態でふさぐと屋根裏で死んでしまい、悪臭・ウジの二次被害になります。相模原市は「建物の周りを調べ、侵入口を特定し、動物が建物の中にいないことを確認してから侵入口をふさいでください(天井裏に侵入した動物は、食べ物を探すために外に出ます)」と案内しています(相模原市)。
追い出しの手段として世田谷区は、燻煙剤(蚊取り線香も有効)、木酢液や強いミントを屋根裏に塗る、電球等を設置して明るくする、を挙げています(世田谷区Q&A)。相模原市も、市販の煙が出るタイプの殺虫剤を「効果的」としています。
一方で、市販の忌避剤(燻煙剤など)で追い出す方法については、東京都環境局が限界をはっきり書いています。「忌避剤を使用することで、その場から動物を追い出すことはできる可能性があります。しかし逃げた個体が別の家に逃げ込み、今度はそこで被害を起こしてしまうことが考えられ」る——つまり、追い出しは封鎖・餌管理とセットでなければ根本解決になりません(東京都環境局)。
自分でできること③:糞尿の清掃——素手で触らず、範囲が広ければ業者へ
糞尿の跡を放置するとダニの発生源になります(武蔵野市・中野区)。片付けるときは素手で触らず、作業後は石けんで手を洗ってください。石けんでの手洗いで大部分の病原体を洗い流せる、というのが船橋市の案内です(船橋市「動物由来感染症を知っていますか?」)。天井裏に糞尿が広く染みている場合は消毒が必要で(酒田市)、区市町村は清掃・消毒を行わないため(北区)、そこから先は業者の領域になります。ため糞の見分け方は動物の糞の見分け方を参照してください。
安全面の注意:近づかない・素手で触らない
ハクビシンそのものに手を出さないのが大原則です。船橋市は「ハクビシンなどの野生動物を見かけても、咬まれたり引掻かれたことによる怪我や感染症を避けるため、近づかないでください」(船橋市)、中野区は「絶対に素手で触れないようにしましょう」(中野区)と案内しています。世田谷区も「野生動物には寄生虫や感染症の病原体が存在する場合がありますので、直接触らないでください」としています(世田谷区Q&A)。
東京都環境局は、アライグマ・ハクビシンが「複数の人獣共通感染症を媒介する可能性があると言われています」とし、感染経路別の一覧を公開しています(東京都環境局 アライグマ・ハクビシンについて・一覧PDF)。自分で対処する人に関係が深いのは次の3点です。
- 毛の抜けた個体は疥癬(かいせん)の可能性: ヒゼンダニによる皮膚病で、人や飼い犬にもうつるおそれがあります(中野区・世田谷区Q&A)。毛の抜けた個体が動けなくなっている場合は、都内なら東京都環境局の鳥獣保護管理担当が相談先です(世田谷区Q&A)
- マダニ: 東京都の一覧では、マダニの刺咬による感染症として重症熱性血小板減少症候群(SFTS)と日本紅斑熱が挙げられています。SFTSはウイルスを保有するマダニに咬まれるか、感染した動物の体液などから感染し、潜伏期間は6日〜2週間程度、致命率は27%とする報告があります(東京都感染症情報センター)。同センターは「野生動物や衰弱している動物には触らないようにしましょう」とし、マダニ対策として肌の露出を少なくすることを勧めています。屋根裏や床下をのぞく際も長袖・長ズボンにしておくのが無難です。マダニに吸血された場合は無理に引き抜かず、皮膚科等を受診して除去してもらうよう、厚生労働省のSFTSに関するQ&Aが案内しています
- 糞尿: 東京都の一覧では、排泄物が手指に付いて口から入る経路の感染症(トキソプラズマ症・エキノコックス症・アライグマ回虫幼虫移行症)が挙げられています。前述のとおり素手で触らず、作業後は石けんで手を洗ってください
咬まれた・ひっかかれた場合は、その傷口から病気に感染することがあります(中野区)。船橋市は、動物由来感染症は風邪やインフルエンザに似た症状が出ることが多く発見が遅れやすいため、体に不調を感じたら早めに医療機関を受診し、動物との接触について医師に伝えるよう案内しています(船橋市「動物由来感染症を知っていますか?」)。
捕獲が必要なら:自治体の制度を確認する
多くの区市町村が、ハクビシン・アライグマについて箱わなの設置や貸出を行っています(アライグマは特定外来生物として制度が異なる点をアライグマ駆除の正しい進め方で解説)。例として、中野区は戸建て住宅(管理会社がある場合や空き家を除く)で継続的な被害がある場合の捕獲事業(中野区「被害が続いたら」)、世田谷区は委託業者による捕獲器の設置(集合住宅も対象。ただし屋内・屋外を問わず同一年度内の申請は1回まで。世田谷区 ハクビシン・アライグマ対策)、新宿区・台東区は箱わな設置(台東区は無料・毎日の見回りが条件)、酒田市は90日以内の小型箱わな貸出(酒田市)、といった制度があります(各自治体公式サイト)。まず「お住まいの自治体名+ハクビシン」で検索し、環境・衛生担当部署の制度を確認してください。
ただし自治体対応には限界もあります。糞尿の清掃・消毒や侵入口の補修は行わない(北区・中野区)、集合住宅は対象外(中野区)、社宅・都営住宅・UR賃貸・店舗・事務所などは対象外で建物の所有者・管理者への相談になる(世田谷区Q&A)、といった運用が一般的です。隣の空き家に住み着いている場合も、捕獲の申請は建物の所有者または管理者からになります(世田谷区Q&A)。
業者に頼むべきケース
次のどれかに当てはまるなら、専門業者への依頼が現実的です。
- 屋根裏で営巣・子育てしている気配がある(追い出しの難易度が上がり、子どもの取り残しリスクもある)
- 糞尿の汚染が進んでいる(天井のシミ・異臭。清掃・消毒・断熱材交換まで必要。屋根裏の異臭の記事参照。国分寺市も、侵入経路の封鎖や屋根裏の糞の除去・消毒といった専門的な相談は民間業者の協会を案内しています。国分寺市)
- 侵入口が特定できない・高所の作業になる
- 再発を保証つきで止めたい(調査→捕獲・追い出し→封鎖→清掃を一括で頼める)
業者を選ぶ際は、無料調査で侵入口と被害範囲を特定してもらい、見積もりに封鎖・清掃・再発保証が含まれるかを確認してから決めてください。