アライグマ駆除の正しい進め方|物音がする時間帯・駆除にかかる時間・戸建てで自治体の箱わなを使う条件と法規制
- アライグマは特定外来生物。捕獲にも飼養・運搬にも法規制がかかり、自分では手を出せない
- 見分けのポイントは「尾の黒い縞5〜7本」「5本指で爪痕が明瞭な足跡」「ため糞をしない」
- 多くの自治体が防除計画に基づく捕獲を実施。まず自治体、被害が進んでいたら業者へ
- 夜行性で昼間は屋根裏で休む。物音は夜〜明け方に出やすく、昼間に隙間をふさぐと閉じ込めるおそれ。自治体の箱わなは設置期間1〜4週間・毎日の見回りが条件
- 賃貸・アパートなら先に大家・管理会社へ連絡。自治体の捕獲制度は「所有者または管理者からの申請」が条件のことが多い
アライグマは法規制が二重にかかる動物
アライグマは環境省が指定する特定外来生物です(環境省 特定外来生物等一覧)。外来生物法により飼育・保管・運搬・野外への放出が原則禁止されており、無許可の野外放出は個人で3年以下の懲役または300万円以下の罰金という重い罰則があります(環境省 外来生物法の規制・罰則)。加えて野生鳥獣として鳥獣保護管理法の捕獲規制もかかるため、「捕まえる」「移動させる」「逃がす」のすべてが無許可ではできません。
つまりアライグマを自分で駆除・退治することはできず、個人ができるのは、ハクビシン以上に「予防と相談」に限られます(ハクビシンとの制度の違いはハクビシン駆除は自分でできる?参照)。
本当にアライグマか:見分けの3ポイント
タヌキ・ハクビシンとの誤認が非常に多い動物です。東京都・農水省の公式資料による識別ポイントは次の3つです。
- 尾に黒い縞が5〜7本ある(東京都 見分け方資料)
- 足跡は5本指で爪痕が明瞭。人の手を小さくしたような形(前足約5.5×6cm。詳しくは足跡の見分け方)
- ため糞をしない(ため糞があればハクビシンが有力。農水省マニュアル)
体格は頭胴長42〜60cm・体重4〜10kgと中型犬に近く、ハクビシン(体重2〜4kg)より大柄です(環境省 生物多様性センター)。
放置リスク:家屋被害と感染症
環境省の資料は、アライグマが家屋に侵入して「爪痕を残したり、天井に穴を開けたり、糞尿による被害をもたらす」こと、そして「アライグマ回虫や狂犬病など、人や動物に共通する感染症を引き起こす危険性」を挙げています(生物多様性センター資料)。力が強く、ハクビシンより家屋の破損被害が大きくなりやすいのが特徴です。活動時間帯は夜間が中心ですが、昼間も活動します(農水省)。
糞尿被害の進み方(天井のシミ→悪臭→腐食)は屋根裏の異臭の記事で解説しています。
安全に対応するために
アライグマ回虫による幼虫移行症は、糞(フン)に含まれる虫卵を口にすることが唯一の感染源です。安全のためには、アライグマ本体や糞に直接触れない、糞がある場所に不用意に近づかないことが重要です(国立健康危機管理研究機構)。誤って糞や汚染された土を口にした可能性がある場合は、早めに医療機関を受診してください。自分で糞尿を片づける際は、素手で触らず手袋を着用するなど接触を避ける対策が必要です。
アライグマが動く時間帯:物音は夜、昼間は屋根裏で休んでいる
アライグマは夜行性で、日中は木の上や家屋のすき間などのねぐらで休みます(柏市(千葉県自然保護課提供資料))。環境省の防除の手引きも「基本的に夜行性だが日中も活動する」とし、ねぐらとして住居や倉庫の屋根裏や壁の隙間を使うことが多いと記しています(環境省 アライグマ防除の手引き(令和7年3月改訂版)資料1)。屋根裏の被害で、この時間帯が意味するのは次の3点です。
- 物音は夜〜明け方に出やすい。 夜に活動して昼はねぐらで休むという行動から、屋根裏の足音は出ていく夕方〜夜と戻ってくる明け方に出やすいことになります。東京都も侵入のサインとして「屋根裏で大きな音がする」「夜、庭や屋根の上に見慣れない動物がいた」を挙げています(東京都環境局)。ただし日中も活動する動物なので、昼に音がしたからアライグマではない、とは言えません。
- 昼間は屋根裏に「いる」時間帯。 中に個体が残ったまま隙間をふさぐと閉じ込めてしまうおそれがあります。侵入口の封鎖は、屋根裏に個体がいないことを確認したうえで進める自治体か業者に任せてください(自分で追い出す行為の問題点は記事末尾で説明します)。
- 春〜初夏は昼間の音が増える。 出産は通常年1回、春に3〜6頭です(環境省 手引き)。農水省の資料では4月中旬が出産のピークで、子は6月上旬から野外活動を始め、子別れは遅く秋遅くまで母親と行動を共にします(農水省 中型獣類の被害対策マニュアル)。4〜6月に昼間も鳴き声や複数の足音が続くなら営巣を疑い、捕獲から封鎖・清掃まで一括で頼める業者に相談する段階です。
相談先①:自治体の防除制度
アライグマは特定外来生物であるがゆえに、自治体側の対策制度が整っている動物でもあります。東京都では区市町が「東京都アライグマ・ハクビシン防除実施計画」に基づいて捕獲を実施しており、相談先は各区市町の環境部署です(東京都環境局)。中野区(戸建て・一軒家で継続被害がある場合の捕獲事業)、新宿区・台東区(箱わな設置)など、無料の捕獲支援を持つ自治体は珍しくありません。
まず「自治体名+アライグマ」で検索して制度を確認してください。対象範囲は自治体によって異なります。たとえば世田谷区は捕獲器の設置事業の対象建物を「住宅(集合住宅を含む)」としており、アパート・マンションも対象になります。ただし利用には捕獲器の設置・回収作業への立会いと毎日の見回りが条件です(世田谷区 ハクビシン・アライグマ対策)。糞尿の清掃・消毒や建物の修繕は自治体はやってくれないため、その場合は業者に相談してください。なお申請できるのは建物の所有者・管理者に限る自治体が多く、持ち家か賃貸かで進め方が変わります。
戸建て・一軒家で自治体の箱わなを使う条件と期間
持ち家の戸建て(一軒家)なら所有者本人が申請者になれるので、制度はそのまま使えます。ただしどの自治体にも「設置期間」と「毎日の見回り」の条件があり、家を留守にしがちな人には向きません。
| 自治体 | 設置期間 | 申請者に求められること |
|---|---|---|
| 世田谷区 | 原則1週間。希望により最大3週間延長(最長4週間)。同一の敷地・建物につき同一年度内に1回 | 設置・回収作業の立会い、毎日の見回り、週1回程度のえさの取りかえ(えさ代は自己負担)、かかったときの速やかな連絡 |
| 松戸市 | 設置日の翌日から起算して2週間 | アライグマとわかる写真や動画を添えて環境保全課に依頼 |
| 坂戸市 | 最長1か月 | えさを各自で用意し、箱わなを毎日確認。受付は平日9〜17時で、捕獲後の回収は獣医師の都合で翌日以降になることもある |
出典:世田谷区 ハクビシン・アライグマ対策・松戸市 アライグマ捕獲用の箱わな設置について・坂戸市 アライグマ(特定外来生物)(いずれも2026年9月23日確認)
見回りが毎日なのは、かかった個体を放置しないためと、対象外の動物(ハクビシン・タヌキなど)が入ったときにすぐ放すためです(坂戸市はアライグマ以外の捕獲を認めていません)。茨城県が住民向けに出している設置のアドバイスでは、アライグマは夜行性なので日中は箱わなの蓋を閉じておくと錯誤捕獲が減ること、設置後は1日1回以上見回ること、3〜10日程度で捕獲できなければ設置場所を変えることが挙げられています(茨城県 箱わな設置に関するアドバイス)。つまり自治体の箱わなを使う場合、駆除にかかる時間は数日〜数週間が目安で、その間は毎日の見回りが続きます。かかった個体を自分で運ぶことは外来生物法で禁じられているので、自治体に連絡して回収を待ってください。賃貸・集合住宅にお住まいなら、申請者の条件が違うので次の項目を先に読んでください。
賃貸・アパートで被害が出たら:自治体や業者より先に大家・管理会社へ
賃貸住宅で屋根裏の物音や糞尿被害に気づいたら、自治体や業者に連絡する前に大家(貸主)か管理会社に知らせるのが順番です。理由は2つあります。
1つ目は民法上の順番です。 借りている建物に修繕が必要になったとき、借主は遅滞なくその旨を貸主に通知しなければなりません(民法615条)。そして建物の使用に必要な修繕は原則として貸主の義務で、借主の責めに帰すべき事由で必要になった修繕だけが例外です(民法606条1項)。侵入口の補修や天井板の張り替えは建物側の工事なので、自分で業者を手配する前に通知しておくことが借主自身を守ります。通知したのに貸主が相当の期間内に修繕しないとき、または急迫の事情があるときは、借主が修繕できると定められています(民法607条の2。条文はe-Gov法令検索「民法」)。修繕費用の負担は、この606条1項の原則と契約書の特約を出発点に貸主と話し合うことになります。
2つ目は自治体の捕獲制度の条件です。 東京都内の区の防除事業を見ると、申請できる人を建物の所有者または管理者に限る運用が多く、入居者だけでは申し込めないことがあります。
| 自治体 | 賃貸・集合住宅の扱い | 申請者の条件 |
|---|---|---|
| 世田谷区 | 住宅(集合住宅を含む)が対象。都営住宅・JKK・UR都市機構の賃貸住宅は対象外 | 対象の敷地及び建物の所有者または管理者による依頼 |
| 北区 | 一般住宅・民間集合住宅が対象。公共住宅は対象外 | 土地の所有者または管理者からの申請 |
| 目黒区 | 一般住宅・民間集合住宅が対象。都立住宅・住宅供給公社の賃貸住宅は対象外 | 「区内に家屋を所有している」ことが要件。箱わなの毎日の見回りは所有者(管理者)が行う |
| 中野区 | 集合住宅(マンション・アパート等)は対象外 | 戸建て住宅で、管理会社がある場合と空き家は除く |
出典:世田谷区 ハクビシン・アライグマ対策・北区 アライグマ・ハクビシンの被害・目黒区 ハクビシンやアライグマの被害でお困りの方へ・中野区「被害が続いたら」(いずれも2026年9月12日確認)
つまり賃貸では、自治体の制度を使うにも大家・管理会社の関与が前提です。専門業者に頼む場合も、屋根裏への立ち入りや侵入口の封鎖は建物への工事にあたるため、貸主の了解を得てから進めてください。入居者ができるのは、被害の日時・場所・音や糞の写真を記録して貸主に伝えること、そして餌になる生ごみ・ペットフードを屋外に置かないことです。
相談先②:業者に頼むべきケース、選び方とトラブル回避
- 屋根裏で営巣・子育てしている(捕獲後の封鎖まで一括で終わらせたい)
- 糞尿汚染・断熱材の破壊が進んでいて、清掃・消毒・修繕が必要
- 自治体の箱わなの空き待ちが長い・集合住宅で対象外だった
- 再発保証つきで侵入口封鎖まで頼みたい
この場合は害獣対策の専門業者に無料調査を依頼します。業者選びで見積もりのトラブルを避けるポイントは、「捕獲(許可手続き含む)・封鎖・清掃・保証」が金額に含まれているかを契約前に確認することです。捕獲だけで封鎖・清掃が別料金になっていたり再発時の保証がない業者は、あとから追加費用を請求されたり再依頼が必要になったりするトラブルにつながりやすいため注意してください。あわせて自分でできる予防(餌になる果実・生ごみ・ペットフードの管理、屋根に届く枝の剪定、隙間の封鎖)は今日から始められます(東京都環境局)。
見積もり・契約でトラブルになったら:クーリング・オフと188
国民生活センターによると、ネズミなどの害獣やゴキブリ・ハチなどの害虫の駆除サービスの相談は増えており、2023年度は前年度同期の約1.5倍・2,000件を超えました。ネットで見つけた格安表示の業者を呼んだら、表示とかけ離れた高額な見積もりを出されたという事例が目立ちます(国民生活センター 2024年4月24日発表)。同センターのアドバイスをアライグマ被害に当てはめると次のとおりです。
| 場面 | 国民生活センターの指摘・アドバイス |
|---|---|
| 広告の「〇〇円〜」を見て呼ぶ | 料金は住宅の大きさや構造、被害の状況で変わる。表示や電話での説明どおりの料金で依頼できるとは限らず、3ケタ台の極端に安い表示で最低料金のまま依頼できることはまずない |
| 「すぐやらないと危ない」と契約を急かされる | 本当に緊急かを冷静に考え、複数社から見積もりを取る前提で連絡する。比較する機会を奪う勧誘をする業者とは契約しない |
| 見積もりのつもりで呼んだ業者とその場で契約した | 特定商取引法上の訪問販売に当たる場合は、契約書面を受け取った日から数えて8日以内なら書面またはメール等でクーリング・オフできる。期間内に工事が済んでいても、無償で元どおりに戻すよう求められる。期間を過ぎても解約できる場合がある |
| 契約書のサービス内容が「一式」だけ/クーリング・オフを断られた | 書面の不備やクーリング・オフ妨害が疑われる事例として報告されている。消費者ホットライン「188」で最寄りの消費生活センターに相談する |
アライグマは自治体の防除制度が使える地域も多いため(前述)、業者の見積もりに納得できないときは、まず自治体の窓口に相談してから比べても遅くありません。
「追い出す」だけでは解決しない
音や光で敷地に近づきにくくする、隙間をふさいで再侵入を防ぐといった予防はできますが、屋根裏にすでにいるアライグマを自分で追い出す方法を試みるのは避けてください。刺激されたアライグマを無許可で移動させる行為は、外来生物法が禁じる「移動させる」に該当するおそれがあります(環境省 外来生物法の規制)。追い出した個体がその後どこに移動したか管理できない点でも近隣トラブルの原因になるため、追い出しを含む対応は自治体か専門業者に依頼してください。